東風フォント問題にまつわる誤解は解けるか

面白い。officeさんのところは敷居が高くて書き込めないですが、読んでるだけで充分ためになるからありがたい。
東風フォントには馴染みがないので遠くから眺めていましたが、おぼろげにGIF問題の時の米ユニシス社と、今回の日立をだぶらせて感じていました。たぶん、私がそういう意見を多く目にしたからだと思います。
今まで自由に使えるものだと思いこんでいたものが、突然使えなくなったショックは大きかったんでしょう。驚きと期待と企業に対する不信感、その他様々な感情や憶測が、混乱を呼び、否定的な意見を呼んだのかなと思います。私も「日立はひどい」とは思いませんが、ネガティブなイメージを持っていました。
でも、dさんのこの発言を読んで、見方が変わりました。もっともです。とても理性的で社会的な見解です。わかりやすいし。
「完璧な管理と対応ができる企業」は頭の中の理想でしかないですが、さもそれが存在するかのように考えてしまうんですかね。だから、「計画的な工作なんじゃないか?」という疑念にも繋がるし、「企業の横暴」という筋違いの考えにも繋がるんでしょう。実際のところ、私はおぼろげにそう感じていましたから。

「株式会社日立製作所さま、株式会社タイプバンクさまの両社の諸権利を尊重し、決定に同意する」と書かれており、交渉の当事者は今回の件について見解が一致したことが確認できます。

この時点で今回の事件について日立側の態度を非難する理由はなくなったと考えています。
交渉当事者の片側が承服できない見解を一方的に主張しつづけるのならば、無理な主張を行なっている側には何らかの非難を受けてしかるべきかもしれませんが、交渉の当事者同士が納得していることについて第三者として非難するという事はないと考えています。

考えてみれば、正当な権利を主張している側を責める道理はないですもんね。こっち側の事情は本来無関係なんだし。気を遣えって要求するのは筋違い。というか、かっこ悪いです。*1

もちろん、今回の件については日立が経営的判断として「そのような権利は存在しないので、日立は制限を行なわない(行なえない)」と宣言することで「気前の良さ」を見せることも出来たとは思います。
しかし、私はその「気前の良さ」を常に要求するのはおかしいと考えています。

一般に、ある企業が保有する権利が何らかの理由で外部に流出し、それが「広く広まってしまったから」という理由で権利の無効化を要求されるというのは異常な事態であると考えます。
それは権利の種類・性質によって変わるものではないと思います。

うーん、本当に理性的だ。「異常な事態」とは、まったくその通りだと思う。自分の身に置き換えたら、ふざけんなと言いたくなるもんな。
今回はたまたまはっきりした運営組織があり、双方が理性的に対応した結果、双方合意の上決着したってことですね。こんなケースって、もしかしたらあんまりないかも知れない。もっと泥沼の戦いになっていたかも知れない。あの国なら訴訟だと思うし(笑)。そう思うと、理想的な決着のひとつだったんじゃないかと思えます。制作終了という結果だけ見れば、やっぱり残念ではあるんですが。
ただ、dさんのような理性的な見方をする人よりは、感情的な見方をする人の方がやっぱり多いんじゃないかと思います。東風フォントの一件で否定的意見を持っている人は、これ読んでおいた方がいいと思いますね。

*1:余談ですが、特許とか商標とかならともかく、自社の保有する著作権の管理ってけっこう難しいなと思いますよ。著作権のあるものなんてそれこそ無数にあるはずだし、あっちもこっちもチェックするってわけにいかないし、「気が付いたら対処する」くらいしか現実的にはできないんじゃないですかね。著作者本人ならともかく、無関係の従業員が気が付くわけでもないですしね。そんなことにコストかけても見返り期待できないし。