デザインの納品物

昨日、PENCKのフォントの件で書いた中で、

なんというか、デザインで飯食ってる人がその辺を勘違いさせちゃうのは、ただ「お粗末」ってんじゃすまないと思うなあ。自分が作ったもの以外は権利関係をはっきりさせて納品するのが当然だと思うんだけど、それはやっぱ素人考えなのかねえ?

と書いた。
実は、以前勤め先でデザイン会社にロゴデザインを依頼したことがあって、その時に「なんだそりゃ?」と思ったことがあったのだ。もちろん盗作だったわけじゃなくて、納品物に使われていたフォントが市販のフォントだっただけなんだけど。
そのフォントはここの。

フォントでは有名だけど、知らない人は全然知らないモリサワのフォント。Mac用の。会社にMacなんか無いのに。

問題だったのは、そのデザインを加工しないわけではないこと。名刺とかに入れる店舗名のデザインも含みだったのね。店舗名って要は地名なんだけど、店舗ってけっこう増減するわけ。なもんで、店舗新設の度に制作依頼しなくてもいいようにって注文を付けてたから、市販のフォントを使ったデザインにしたんだと思う。

が、しかし。

そのフォントはMac用。新しくMac買って、イラストレータも買って、モリサワのフォントも買えば自分たちで好きに加工できる…って、そんなの予算に含まれてません。全然聞いてないから(-_-;)。

というかね、納品後に別途購入しなきゃいけないものがあるって点でも不親切だと思ったけど、もっと不親切だと思ったのは説明が全然無かったこと。

私が聞いてないだけで「メイン担当者は聞いたけどよくわかってなかった」のかも知れない。でも、納品物(印刷物とデータ)にはロゴごとにモリサワのどのフォントかしか書いてないのよ。しかも略語。普段使ってないのに略語がわかるかっつーの。その略語がモリサワのフォントのことだと判明するまで、かなりの時間を使った。

だから購入しなきゃいけないフォントのリストはもちろん、それを使うために必要な機材やソフトについては一切書いてないわけ。

そもそも発注した側としては、デザイン料にフォントも含まれてると思ってたし、Windowsと納品物があれば大丈夫なんだと思ってたわけだよ。何の説明も無いから。わざわざMacを買って操作を覚えなきゃいけないなんて思ってなかったし、Macで見ないと表示がおかしくなる納品物だなんて思ってなかった。*1

それが納品されてみたら、解読が必要な上にWindowsじゃまともに見られない。有名なデザイン事務所だからって安心してたのに、ふたを開けてみればそんな感じだった。いや、もちろんデザイン的にはいいものだった*2と思うけど。

ついでに言うと、その時に感じたのは、納品物には『わかりやすく誤解が無いよう気を配ったドキュメント』も一緒に注文しないとダメだってこと。しっかりしたシステム関係の企業だと、言わなくても提出してくれるところがあるけどね。

なんだかまとまらない話になったけど無理にまとめると、デザイン業界じゃ常識なのかも知れないけど、デザイン業界とは違う業界の人から発注された仕事なんだってことは、知っておいて損は無いと思う…ってことだな。それをわきまえて配慮を忘れなければ、誤解も減るだろうしクレームも不愉快さも減るだろうから。

*1:予算の都合(=周囲の無理解)でサーバ買えないとか、Mac買えないとか、その他経費をかけられない様々な理由があったわけだけど。

*2:バカと天才が紙一重と言われるのと同じように、いいデザインと手抜きの差が紙一重なんだとすればだけど。