なんでこんなに感動しちゃってるのか<アレグリア2

いや、「感動した」ってことをくどくど書くのもどうかと思うんだけど、何にどんな風に感動したのかってのを記録しておこうと思う。

1.美しさ、かっこよさ
もともと器械体操が大好きなんだけど、その体操とバレエの融合みたいな動きが、とても素晴らしかった。
トランポリンを使った宙返り(スーパー・パワー・トラック)は、北斗の拳に出てくる南斗水鳥拳のレイみたいで、かっこいいし、憧れてしまう。自分もやってみたいと。
あとファイアー・デュオ。これはリズムもいいし単純にかっこよかった。

2.音楽と歌声
生の迫力と言いうか、幻想的な雰囲気でこれも良かった。
特に歌声。これは現場で聞いてみて欲しいと思う。

3.クラウン
面白いというか、とても愉快で嬉しい時間をくれた。
クラウンって重要な盛り上げ役なんだなあと、見ているあいだ感心してた。

ってまあ、「それぞれ」について書こうと思えば書けるんだけど、「それぞれの良さ」以上に感動したことがある。

何かと言うと、この公演の「プロ」の部分だ。

たとえば、出演者は通路を歩くときにも役柄の動きを崩さない。なりきった動きをしている。ステージじゃないからと言って崩してたら雰囲気ぶち壊しなわけで、当たり前といえば当たり前なんだけど、そこに「プロとしての当たり前」を感じたのだ。まさに、彼らにとっての本番なんだと。

それから、クラウンが会場を盛り上げるために観客席に向かって色々やるわけだけども、それも段階を追って徐々に盛り上がるようにと考えられていると感じる。計算というか、盛り上げるために何が出来るか、どうすればより良くなるか、そういう思いがなければできないんじゃないかと思う。もちろんセオリーはあるにしても。

逆に、日本人のガードマンや、売店の売り子には特に目立ったプロ意識を感じなかった(当然か)。まさに普通な感じ。それと対照的ってわけでもないけど、出演者は本当にプロだなあと思うことしきり。それが純粋に嬉しかった。そしてたぶん、出演者も楽しかったというか、満足してたんじゃないかと思う。それも嬉しかった。

これはやはり彼らがプロとして考え、プロとして振る舞っていたからだなと思う。私はサーカスのことはよく知らないけれど、彼らはひとつの公演の役柄を演じているのであって、「単なる身体能力の高い人」ではないんだということは良くわかった。あれは曲芸ではない。

我々は社会人として、労働者として、何かを作ったりサービスしたりして報酬を受けてる…いや、報酬があろうが無かろうがなんでもいいんだけど、ある程度のプライドを持ってやっている人は多いと思う。しかし、それにしては感動するようなサービスや対応や製品に出会うことって本当に少ないなと、私は日頃から感じている。

私はといえば、出会った相手を感動させたいとは思いつつも、「常に」はやはりできていない。それでも、生きているからには感動を求めずにはおれないし、【それを忘れたらなんのための人生か!】と思って生きている。でも、そういう気持ちすらも感じられないことがしばしばある。会社の中で感じることは特に多い。

だから家族は別だが、私の日常では誰かに感動させられることは実に少ない。良い意味で驚かされることが滅多にない。

これは私が意固地になってるからではない。私はどちらかと言えば感動したがり屋なので、できるものなら感動したいと思っている。でも、しないのだ。もちろん感動できることにまったく出会わないわけではないけど、私の思う普通には程遠いくらい感動できることには出会わない。

それはなんでだろう?と考えると、たぶんだけどプロに出会うことが少ないからだと思う。プロ意識ってのは、単に「自分はプロだ」と思うことじゃなくて、プライド持ってるかどうかであったり、プライド持ってるなりの姿勢があってこそだろう。口だけプロってのは、プロじゃないもの。

たとえば私は高木浩光さんの日記で感動することがある。「すごい」と。ちょっと毒がある文章には、他の言い方もあるんじゃないかと思うときもあるけど、そんなことは些細なことだ。情報量の多さや文章の明晰さを見れば、誰でも真似が出来るというものじゃないことはすぐにわかる。ショービジネスとはまったく別物だしサービスでやってるわけでもないだろうけど、的確に指摘することや明晰な文章を書くことへのプライドを感じる。もちろんこれは私の勝手な解釈だけど、私はそう感じるのだ。だから感動する。

んじゃ、感動の源ってなんだろう?と考える。相手への思いやり?

違う。真剣さだ。

自らが取り組んでいることに対して真剣であればあるほど、そういう人を見る時、私は感動する。これは他の人もそうなんじゃないかと思っている。

私はなぜアレグリア2を観て感動したのか。彼らが真剣であったからだ。何に対して?

自分達の舞台に対して。
観客を楽しませるということに対して。
世界最高のサーカスを見せるのだということに対して。

ああ、この出会いが嬉しくて仕方ない。